教員紹介

分子生命科学科 応用生命コース

吉田 孝 教授

YOSHIDA Takashi

専門分野:
酵素化学

  • キーワード:
  • 糖質分解酵素
  • プロテオグリカン

研究内容

〇糖質といえば太る食べ物だと思っている人が多いようですが、綿シャツの素材であるセルロース、野菜や果実に多いヘミセルロース・ペクチン、カニの甲羅をつくるキチン、コンニャクの主成分マンナン…これらいいずれも糖質・・炭水化物の範疇に入ります。さらにいえば関節でショックアブソーバーになっている軟骨多糖や、サラダを口に入れた時にパリッとした食感をもたらす植物細胞壁も、美容分野で重要なヒアルロン酸も、血球の分類に利用される血液型物質も、すべてが大きな「糖質」のグループに含められます。

〇ではそれらの糖質はどのように作られるか?というと、例えばタンパク質のアミノ酸配列が遺伝子を設計図として決められているのとは違い、糖質の形(分子構造)を遺伝子から直接決定することはできません。糖質の構造はその時、その場で働いている酵素の性質に大きく左右されます。ということから、珍しい糖質があるところには必ず、珍しい酵素があると昔から考えられてきました。糖質の研究と糖質に作用する酵素の研究は、いわば右足と左足のように補い合いながら発展してきた歴史があります。

○タンパク質や脂質に、糖が鎖のように結びついた複合糖質というものがあります。それら糖鎖の形はさまざまですが、そこには血液型に示されるように、生物にとって大事な情報が隠れています。これまでに、糖鎖に作用する酵素の1つ、α-マンノシダーゼについて主に菌類を中心に遺伝子や酵素的性質、結晶構造を調べました。

○野菜など植物の細胞壁にはキシログルカンという多糖があり、植物の体を守っています。植物病原菌(カビやキノコの仲間)はそれを酵素で分解してから植物体に侵入します。これまでにVerticilliumという植物病原菌がつくるキシログルカン分解酵素について調べました。

〇デンプンを分解していくとイソマルトースというオリゴ糖が残ります。これを分解する酵素、イソマルターゼを糸状菌(カビ)の中から見つけ、遺伝子や性質を明らかにしました。

○人間の皮膚や関節にはプロテオグリカンという複合糖質があり、肌の潤いを保ったり、運動時の衝撃を和らげたりしています。プロテオグリカンは主に陸上動物のものが研究されてきましたが、私たちは海の生物、特に軟骨魚類(サメなど)からプロテオグリカンを取り出し、その構造や特徴を調べています。

2023年2月22日 更新
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