誕生と歴史

「紅の夢」は2つの偶然が重なって誕生したりんご

「紅の夢」は2つの偶然が重なって誕生したりんご

「紅の夢」は全く異なる2つの偶然が重なって誕生したりんごです。

偶然1 紅玉に予想外の花粉が付いたこと

紅玉にスターキングデリシャスを交配したのに、 ミツバチか何かのいたずらで別の樹の花粉が紅玉に付きました。

偶然2 赤くなる品種が日本にやってきこと

偶然ついた花粉の木は、もともと果皮も果肉も黄色はずのりんごでしたが、輸入される際入れ替わっていたのか、なぜか果肉が赤くなる樹にが日本にやってきました。

つまり、予定通り紅玉にスターキングデリシャスが交配していたら「紅の夢」は生まれませんでしたし、そもそも偶然交配された花粉が果肉が赤くなる品種のものでなければ生まれていませんでした。

よく果樹の世界では、一生懸命育てている人のところには神様がプレゼントをくれるといいます。
この2つの偶然で生まれた「紅の夢」は、長年りんごの研究を続けてきた塩崎名誉教授に神様がくれた贈り物なのかもしれません。


昭和56年から研究

誕生と歴史

「紅の夢」の原木

弘前大学農学生命科学部附属藤崎農場は世界的なリンゴ品種「ふじ」が生まれた土地です。
弘前大学農学生命科学部附属藤崎農場では、そんな歴史的な土地で新時代にマッチした新たなリンゴ品種を作出するべく昭和56年より研究を続けてきました。

「紅の夢」の育成は、職員の削減により空き地が目立つようになったりんご園地の空きスペースを簡易な方法で埋めるために、 塩崎雄之輔弘前大学名誉教授がリンゴの育種(いくしゅ)をスタートさせたというのがきっかけでした。

良い品種が誕生する可能性は数千~数万分の1と言われ、育種には広大な畑と長い年月が必要なため、 空いた畑を活用するにはまさに打ってつけの方法でした。

「紅の夢」親品種の紅玉

紅の夢の親品種子

「紅の夢」親品種の紅玉

塩崎雄之輔弘前大学名誉教授が1994年に交配した「紅の夢」は、当初「紅玉」に「スターキングデリシャス」の花粉を授粉した結果できたものと考えられていました。
しかし、共に白い果肉である「紅玉」「スターキングデリシャス」の交配では赤い果肉のりんごが生まれた事例の報告がないことから、DNAによる親品種の推定を行ったところ、「スターキングデリシャス」は育種親ではないことが判明しました。

「紅の夢」の父親は「名無し」

紅の夢(くれないのゆめ)の父親「エターズゴールド」とラベルの付いた樹

「紅の夢」の父親である藤崎農場に植栽された「エターズゴールド」とラベルの付いた樹

藤崎農場にある「エターズゴールド」

藤崎農場にある「エターズゴールド」トラベルの付いた樹に成るりんご

「紅の夢」父親探しは困窮を極めました。
DNAをさらに詳しく調べると、藤崎農場の「エターズゴールド」というラベルが付いている樹が父親であると判明しました。
しかし、またここで矛盾が生まれました。「ゴールド」と名前がついているりんごは普通、果皮は黄色ですがこの樹には赤い果皮で赤い果肉のりんごが成りました。

そこで「エターズゴールド」の生まれ故郷であるアメリカに問いわせたところ、本物の「エターズゴールド」は果皮も果肉も黄色だという回答を得ました。

つまりこの樹は「エターズゴールド」ではなかったのです。

更なるDNA調査の結果、藤崎農場の「エターズゴールド」というラベルが付いている樹は本物の「エターズゴールド」ではないことが判明しました。

おそらく日本に導入された時点で、何らかの原因で本物の「エターズゴールド」が枯れ、台木に使われていた実生が育ったものと考えられます。

「紅の夢」の父親は「エターズゴールド」とラベルの付いた、品種名のない樹であることが明らかになりました。

「紅の夢」情報

メールでお問い合わせ

国立大学法人 弘前大学 農学生命科学部附属 生物共生教育研究センター 藤崎農場
〒038-3802 青森県南津軽郡藤崎町藤崎字下袋 7-1

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