弘前大学白神酵母

私達は未知の可能性を秘めた自然界酵母を世界自然遺産白神山地から分離して広く利用してもらうことで地域の食産業の強化に貢献することを目指しております。弘前大学白神酵母(略称:弘大白神酵母)とは、弘前大学農学生命科学部環境微生物学研究室において多様な生態系を抱える白神山地から分離・培養した酵母の中から、企業の方に利用していただくように公開している酵母のことです(表参照)。現在5株を公開していますが、同じ酵母でありながらそれら間には特徴の違いがあります。例えばNo.9株には4℃でもアルコール発酵力が維持されるという特徴があります。No.65株で発酵させたりんご酒を酢酸発酵すると出来た酢はスッキリして飲みやすいという評価を受けました。弘大白神酵母株を充実させることで様々な用途に対応していくつもりです。

菌株名 分離源 分離源詳細 利用
9 ブナ 腐植 シードル・清酒の醸造
65 ミズナラ 樹皮 リンゴ酢醸造用りんご酒の製造
114 コシアブラ リター
152 オノエヤナギ 樹皮
153 オノエヤナギ リター

なぜ白神山地のような自然環境から酵母を分離しているのでしょうか。学術的には酵母とは真菌門のなかで単細胞形態をとる生物群のことをいいますが、一般的にはアルコール飲料を製造したりパン生地をふくらませたりするのに利用されるSaccharomyces cerevisiaeのことを指します。Saccharomyces cerevisiaeはパン酵母(baker’s yeast)、ワイン酵母 (wine yeast)、酒酵母 (sake yeast)などと呼ばれますが、それは同じSaccharomyces cerevisiaeでもヒトと同じように個性があり、パン酵母はパン作りに、ワイン酵母はワイン造りに、酒酵母は酒造りに適した性質を持つためです。これらの実用酵母はそれぞれの用途に適するように飼い慣らされた「家畜」のような存在です。その実用酵母で作られる製品は当然期待通りの高品質なものです。しかし、これまでにない特徴の製品をつくることや、消費者の嗜好に合わせることに飽きたらず新たに嗜好を作り出すという積極的な試みには向いているとはいえません。自然界の酵母は実用酵母に比べて発酵力やアルコール耐性などの点で優れているとはいえませんが、それらを使用して作った製品が香りや味わいなどにおいて意外な特徴を示すことがあります。つまり、自然界の酵母は可能性という点においては実用酵母よりも優れているといえるでしょう。

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