教員紹介

食料資源学科 食品科学コース

佐藤 之紀 教授

SATO Yukinori

専門分野:
食品物性機能制御学

  • キーワード:
  • 粘度
  • 分子間相互作用
  • 水分活性
  • 水和

研究内容

当研究室の研究内容は,食品中の水と物性に関する基礎研究と応用研究です。基礎研究の課題が当研究室のメインのテーマです。キサンタンガムなどの食品高分子の分子間相互作用を,糖などの共存低分子が存在している水溶液中の粘度などを指標にして解析してきています。共存低分子である糖は,多糖類とはほとんど結合しませんが,水分子とは選択的に水和します。その結果として,高分子が存在している水溶液の環境に変化が生じ,高分子間相互作用も変化します。この現象の機構解明のため,粘度計(図1;回転粘度計に少量サンプラーを附属させている写真)を主な分析機器に用いて,糖の構造と高分子間相互作用の関係を解明しようとしています。食品はいろいろな種類の分子が共存している複雑系であるので,これまでは食品中の分子間相互作用を解析するためのモデルを構築してきていることになります。これまで,コンビニエンスストア等の商品に用いることが多いキサンタンガムは,代表的な他の食品高分子と比べて,分子自体は共存低分子の影響をほとんど受けず比較的安定な構造を保持していることが明らかにされてきています。さらに,キサンタンの水溶液の粘度は水溶液が温度変化してもほとんど変化しないことは知られていましたが,コンフォメーション変化を数値で示す新規な学術的なパラメータを設けて,キサンタンガムの分子の安定性を探っています。

図1;回転粘度計に少量サンプラーを附属させている

一方,食品の物性の発現には,そこに存在している水の役割が大きく影響しています。しかし,水和を追跡するのに簡易的な方法がほとんどないため,ガラス製のキャピラリー粘度計を駆使して,水和を算出する方法を用いてアプローチしています。理論も測定機器も複雑にすればするほど最先端の科学をしている気になりがちですが,当研究室では理論を単純化しようと心がけてきています。また,実験を行う側の都合に合わせて実施できるような実験系を構築してきています。その点で,研究者を目指す学生は,当研究室のように実験系がある程度整っている研究室よりは,実験対象とする生物などの都合に合わせて実験時間を強いられる環境の研究室の方が将来的に独立して実験する際には得るものが大きいかも知れません。

また,食品中の水と物性に関する応用研究としては,食パンの力学物性に関する研究があげられます(図2;食パンの力学物性測定の写真)。食パンの力学物性を測定する方法は,すでにいくつか知られていますが,それぞれの方法には問題点があり,これまでに食パンの力学物性測定方法の変法を提唱してきています。また,食パンを噛んだ時のかたさは,指先で食パンを圧した時の感覚と対応していることを明らかにしてきています。さらに当研究室では,食パンに関連する食品の力学物性に新たなパラメータを加え,新しい視点から物性値を数値化しようと試みています。

図2;食パンの力学物性測定

図2;食パンの力学物性測定


本学大学院地域共創科学研究科の私の研究紹介の動画がYoutubeにアップされています。研究の概要を把握されるには,YouTube https://www.youtube.com/watch?v=mrWO_wmsEwQ をご覧いただきますと概要の理解への一番近道です。

2023年6月26日 更新
このページのトップへ戻る