教員紹介
地域環境工学科 農業土木コース・農山村環境コース
森 洋 教授
MORI Hiroshi
専門分野:
基盤造構学
- キーワード:
- 土構造物
- 耐震性評価
- 安定性評価
- 設計理論
研究内容
近年、東北地域では豪雨や大規模地震時により農業水利施設構造物(ため池【ダム】や埋設管、開水路など)の被害が見受けられることから、災害に強い社会基盤施設整備の構築に向けた研究が求められています。農業水利施設構造物の多くは地盤上又は地盤内に存在しており、地震や降雨、積雪などの様々な外的要因によって各種の問題が発生し、地盤の破壊挙動がより複雑化すると同時に、食物(糧)生産に必要な農業水利施設構造物の力学的安定性も大きく変化します。
本研究室では、それらの破壊挙動を解明するために、フィールド実験はもとより室内模型実験や数値解析手法を駆使して、実務設計手法への反映を目的としています。
小型振動台模型実験装置によるファイルダムの耐震性評価
一般的にフィルダムは、均質型、ゾーン型、遮水壁型に分類されており、特にゾーン型のダムでは堤体内に遮水性ゾーン(コアゾーン)や透水性ゾーン、フィルタゾーン等の複雑な盛土地盤構成をなしているため、浸透を伴う土構造物の耐震性の解明が急がれています。
本研究室では、遮水機能等を伴った各種フィルダムの耐震性評価を振動台模型実験装置にて実施し、フィルダムの破壊挙動を検討しています。
地中内構造物を想定したトラップドア模型実験装置による地盤内の変状評価
近年、国内では地盤の陥没事故が多数発生しており、その多くの原因としては老朽化や地震等により埋設管などの地中内構造物が変状し、地盤内にゆるみ領域を形成することが挙げられています。この様な「ゆるみ領域」の発達を防ぐための対策手法として、埋設管自体を地盤深く設置することが考えられますが、その他にも補強土工法等が考えられます。
しかし、補強材と地盤の相互作用に関する研究内容は少ないため、本研究室では地中内構造物の変状が地盤に及ぼす影響について、補強材の敷設条件や摩擦条件を変化させたトラップドア模型実験を実施しています。
弾塑性有限要素解析によるファイルダムの耐震性評価
ファイルダムの主な震性評価手法は、等価線形化法による動的全応力解析結果を利用したNewmark法等による変形量評価と言われています。しかし、基盤の想定入力加速度が1000Gal程度と大きくなると、ダム天端部での応答加速度が4000Gal程度に増幅する場合もあり、特に、天端付近でのひずみレベルが数%と大きく、等価線形化法の適応範囲をオーバーしている可能性が考えられます。一方、ひずみ軟化等を考慮した動的弾塑性解析(コードネーム:Nonsolan)による変形量評価手法も検討されており、その取り扱い方が比較的簡便である弾塑性全応力解析でも、実測値と比較し得る結果になることが本研究室でも明らかにされつつあります。
*H30年北海道胆振東部地震時に瑞穂ダム基盤部で計測された波形を入力地震動として利用
全国のため池廃止工事例の体系化に向けて
農業用ため池に関わる新法施行後(平成31年法律第17号・令和2年法律第56号)のため池廃止工事件数は3倍程度に増加しており、今後もため池廃止工事への取り組みが促進されると伺えます。主なため池の廃止工法は、開削工法、暗渠工法、埋立工法の3種類でありますが、それらを組み合わせた複合工法も見受けられます。特に、排水時の土砂流出を防ぐための沈砂池を池敷内に設置したり、排水用暗渠埋設管の閉塞を防ぐための流木止めを設置する等、明確な対策工法や設計指針がない中で、各自治体が独自に創意工夫して対応している実態が全国調査より明らかになっています。
*室内実験だけではなく、フィールド調査も全国規模で精力的に実施していますので、少しでも「土」に触れて見たいと思っている方がいましたら、どうぞ研究室(419)の扉をたたいて下さい。