教員紹介

生物学科 生態環境コース

森井 悠太 准教授

MORII Yuta

専門分野:
進化生態学

  • キーワード:
  • 種分化
  • 生物間相互作用
  • 生物多様性
  • 市民科学
  • 陸産貝類

研究内容

地球上の生物多様性は,どのように創出され維持されているのでしょうか。表現型や種の多様化を生み出す最も強力な生物間相互作用は「資源をめぐる競争」とされており,最も普遍的な相互作用であるはずの「捕食–被食者間相互作用(食う食われるの関係)」の影響は軽視されている現状があります。一方,研究対象である東北アジア地域(北海道・中国・ロシア極東域)の陸産貝類(カタツムリ)種群では,表現型と種に著しい多様化が見られる一方で,種間に「資源をめぐる競争」がほとんど働いていない稀有な系であることを明らかにしました。この系を用いることで「資源をめぐる競争」と「食う食われるの関係」とを分離して扱うことができ,表現型と種の多様化に対して捕食者が正の効果を及ぼすことを実証的に初めて示唆することに成功しています。特にカタツムリが殻を振り回して外敵を撃退する行動を初めて発表した Morii et al (2016, Sci Rep) は,国内外のメディアに大きく取り上げられました。現在もこの「捕食者による被食者の多様化メカニズム」の実証に向け,野外における定量区画調査による生態学的な研究から,DNA を扱う分子生物学的な研究,殻組成や同位体に着目した生化学的な研究など,多角的なアプローチにより研究を行っています。
同時に,外来種の大型ナメクジ・マダラコウラナメクジを対象にした,市民科学のプロジェクトも主導しています。市民が集めたナメクジの観察結果を用いて,ナメクジの出現しやすい気象条件を最新のベイズ統計から割り出した Morii et al (2018, STOTEN) は,特に顕著な成果として挙げられると思います。市民の方々と共に立ち上げた「外来ナメクジに挑む市民と学者の会」の活動も評価され,2019 年には日本自然保護協会の主催する自然保護大賞「入選」を果たしました。多様な研究手法だけでなく,基礎と応用の両面からも広い視野を持って研究に取り組んでいます。

研究対象のひとつであるヒメマイマイ

研究対象のひとつであるヒメマイマイ

2024年10月18日 更新
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