教員紹介
生物学科 基礎生物学コース
永長 一茂 准教授
NAGAOSA Kazushige
専門分野:
生体防御学
- キーワード:
- 貪食
- ショウジョウバエ
- 疾患予防
- 成長調節
- 食品
研究内容
生体恒常性の維持には、体内に出現する「除去されるべき細胞」の確実な除去が不可欠です。除去されるべき細胞は、発生過程で一時的に使われた細胞や寿命を迎えた細胞といった役割を終えた細胞、がんなどの疾患の元となる遺伝子変異細胞、ウイルス感染細胞、外から侵入した病原性微生物など多岐に渡ります。これらの細胞は、マクロファージなどの免疫細胞や周囲の細胞が「貪食受容体」を介して特異的かつ迅速に貪食することで、体内から取り除かれます。本研究室では主にモデル生物のショウジョウバエを用いて、その仕組みや意義に関する基礎研究・応用研究を行なっています。
1)貪食受容体を介した成長調節に関する研究
貪食受容体のintegrin αPS3/βνとDraperを持たないショウジョウバエは、はた目には何ら異常は見られませんが、個体成長により長い期間が必要なことや、飼育条件によっては途中で発生を停止してしまうことがわかってきました。その仕組みの詳細を調べています。
2)貪食受容体を介したがん予防に関する研究
ショウジョウバエにもがん様の症状がみられます。細胞周期チェックポイント遺伝子の発現を抑制することで自律的な細胞分裂を行う細胞を出現させた「腫瘍形成モデルショウジョウバエ」を観察したところ、腫瘍形成の抑制には貪食受容体存在が必要なこと、腫瘍が免疫細胞の貪食関連遺伝子群の発現を抑制することがわかりました。腫瘍と免疫細胞の攻防について、さらなる解析をすすめます。
3)がん・感染症予防食品の探索
「体内を『不要な細胞の除去がより活発に起こる環境』にすれば、がん発症や感染症の重症化が起こりにくくなる」との考えに基づき、そのような機能を持つ食品の探索を行っています。医療費高騰化が叫ばれる昨今、殆どの人が毎日欠かさない食事を通して病気が予防できるなら、これほど有難いことはありません。遺伝子変異を持たせた細胞を「がん化する前の細胞」に見立て、その除去の促進、あるいは増殖の抑制を促す食品を、地元産品を中心探索しています。
ショウジョウバエは自然免疫のモデルとしても知られています。貪食受容体は感染症抑制にも重要な役割を担っていることもわかってきました。3mmにも満たない小さなショウジョウバエの体内に細菌を直接注射する感染モデルを駆使し、その仕組みの詳細を明らかにするとともに、感染症予防に繋がる食品の探索も行う予定です。