教員紹介

分子生命科学科 応用生命コース

中井 雄治 教授

NAKAI Yuji

専門分野:
食品生体応答学, バイオインフォマティクス

  • キーワード:
  • ニュートリゲノミクス
  • DNAマイクロアレイ
  • 食品機能
  • ゲノム解析

研究内容

からだには、外的要因・内的要因によるさまざまな負荷(ストレス)に対して、一定の状態を保つポテンシャル、すなわち生体恒常性が備わっています。栄養条件の変化も、それが過度になると一種のストレスです。過去数十年にわたって問題となっているメタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積が引き金となって、高血圧・高脂血症・高血糖を複合的に併発する生活習慣病への途上の状態です。メタボリックシンドロームは、エネルギー恒常性を維持できないほど負荷がかかった状態、あるいは調節機構に不備が生じた状態と理解することができます。当研究室は、生体の恒常性調節機構の中でもエネルギー恒常性をはじめとする生理学的な側面に着目し、食品をプローブとして生体恒常性調節機構を探ろうとしています。

手法としては、異なる栄養条件で飼育したショウジョウバエ、ラット、マウス等のモデル生物の個体や組織から抽出したRNAをサンプルとしたトランスクリプトーム解析(ゲノムにコードされる遺伝子がどのように使われているかを網羅的に解析する手法)が中心です。トランスクリプトーム解析(トランスクリプトミクス)は「その時生体(あるいは組織、細胞)で何が起こっているか」を知るための有効な手段です。現在は主としてThermo Fisher Scientific社のGeneChip(一般名DNAマイクロアレイ)を使用しています。このようなアプローチは「ニュートリゲノミクス」と呼ばれていて、2000年頃に登場し、現在では食品研究の重要な部分を占める分野です。一般に、食品に対する生体応答は微小な変化であると考えられます。ニュートリゲノミクスの分野ではその微小な変化を捉えるために、実験系とデータ解析方法の両者を最適化することこそが成功への鍵です。当研究室では、実験系を工夫し、最適なデータ解析手法を採用することによって、難しいこの分野の研究に取り組み、成果を挙げつつあります。

また当研究室では、トランスクリプトーム解析だけでなく、ゲノム未解読生物のゲノム解析にも取り組んでいます。地域の農林水産物を特徴づける形質をゲノム情報から読み解き、高付加価値化に繋げることを目指しています。手のひらサイズの次世代シークエンサー、Oxford Nanopore Technologies社のMinIONとバイオインフォマティクス技術を駆使して研究を進めていきます。

2025年5月26日 更新
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