教員紹介
食料資源学科 食品科学コース
中島 晶 教授
NAKAJIMA Akira
専門分野:
食品安全生理学
- キーワード:
- 認知症
- 記憶
- 食品成分
- 脳神経系
- 内分泌かく乱物質
研究内容
私たちの研究室では培養神経細胞やマウス、ラットといった小動物を用いて、食品に含まれる内分泌かく乱物質などの化学物質の脳神経系に対する影響について研究しています。また、アルツハイマー病などの認知症の予防・改善に効果のある食品成分の探索を行っています。
近年、認知症や生活習慣病の罹患率の増加や医療費の高騰を背景に、これら疾患を予防し健康寿命を延ばすことが重要な課題となっています。本研究室では食品研究に薬理学的視点を取り入れ、食品成分の有効性および安全性について科学的なエビデンスを提供することを目的に研究を進めていきます。
研究内容
1. 内分泌かく乱物質の脳神経系への影響の解明
テトラブロモビスフェノール-Aなどの臭素系難燃剤は現在広く用いられていますが、内分泌かく乱作用と共にその暴露による脳神経系への影響が懸念されています。本研究では、食品を含む環境中に存在する臭素系難燃剤の脳神経系への影響について研究しています。
最近、代表的な臭素系難燃剤であるテトラブロモビスフェノール-AとヘキサブロモシクロドデカンがPC12細胞において小胞体ストレスを誘導し、細胞死を引き起こすことを明らかにしました(Environ Toxicol Pharmacol, 2023年)。
2. アルツハイマー病などの認知症の予防・改善に有用な食品成分の探索
本格的な超高齢社会を迎え、アルツハイマー病などの認知症に対する予防・改善法の開発が社会的要請です。本研究では、認知症の予防・改善に有用な食品成分の探索を行っています。
これまでに、青森県の特産品であるカシスが老化促進モデルマウスにおける記憶障害を改善することを明らかにし、報告しています(J Food Biochem, 2022年)。
また、柑橘類果皮の成分であるフラボノイド化合物ノビレチンが、種々の認知症モデルマウスにおける記憶障害やアルツハイマー病で見られる神経病理学的変化を改善することを明らかにしています。ノビレチンの抗認知症作用に関する研究成果は世界的に注目されており、アミロイド前駆体タンパク質トランスジェニックマウスにおけるノビレチンの有効性を示した論文 (J Pharmacol Exp Ther, 2008年) の被引用数は2022年時点で150回を、嗅球摘出マウスにおけるノビレチンの有効性を示した論文 (J Pharmacol Sci, 2007年) の被引用数は2022年時点で100回を超えています。