教員紹介

生物学科 基礎生物学コース

笹部 美知子 准教授

SASABE Michiko

専門分野:
植物細胞生物学

  • キーワード:
  • 細胞分裂
  • 微小管
  • キネシン
  • 植物発生
  • リン酸化

研究内容

細胞分裂は全ての生物において生命の根源となる現象です。私達は植物を材料として、細胞分裂の分子メカニズムと植物の発生を制御する分子機構の理解を目指して研究を進めています。

植物は成長に伴い、連続的で規則的な細胞分裂と細胞運命決定(細胞分化)により葉や根などの器官をつくり生長します(図1)。近年の研究により、様々な組織で細胞運命決定に関わる分化因子が多数同定され、植物の細胞分化のしくみの理解は大きく進みつつありますが、一方で、それぞれのイベントの詳細な分子制御のメカニズムや細胞分裂と細胞分化がどのようにリンクしているのかについてはまだまだ不明な点が残されています。

図1 実験材料のシロイヌナズナと発達中の胚

私達は植物の発生を制御するしくみの理解を目指して、細胞分裂に着目して研究を行っています。特に注目しているのは、細胞が二つに分かれる細胞分裂の最後の過程である細胞質分裂です。細胞質分裂の過程は動物と植物で見かけ上大きく異なっており、動物細胞では細胞がくびれることにより二つの細胞に分かれるのに対して、植物細胞では細胞の内側から細胞板と呼ばれるしきりが形成されることによって二つの細胞が生じます(図2)。細胞質分裂は、細胞レベルでは遺伝情報を二つの細胞に伝達するための最後の重要なイベントですが、個体レベルで見ると個々の細胞の運命や植物の形が決まっていく瞬間でもあることから、発生学的にも重要なイベントであると考えています。私達は細胞質分裂に必須であることが分かっているリン酸化酵素や、研究過程で見つけた細胞質分裂の制御に関与しているタンパク質の分子機能や個体における発生学的な機能について、細胞生物学的手法や遺伝学的な手法を用いて研究し、植物の細胞分裂や細胞分化のしくみを明らかにしようとしています。細胞分裂の様子はいつも整然と美しく、何度見ても魅了されてしまいます。動くことができない植物ですが、細胞の中では様々な分子がダイナミックに動きながら、正確なタイミングで正確な方向に分裂を繰り返すことにより新しい細胞が生み出され、規則的で美しい多様な植物の形を作り出しています。この美しく神秘的な仕組みの解明に少しでも貢献したいと思いながら日々研究に取り組んでいます。

図2 植物の細胞分裂と分裂装置

2023年2月21日 更新
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