教員紹介

生物学科 生態環境コース

曽我部 篤 准教授

SOGABE Atsushi

専門分野:
動物生態学

  • キーワード:
  • 性淘汰
  • 配偶システム
  • 魚類
  • 寄生

研究内容

1)動物行動の多様性とその進化

一見奇妙に思える動物の行動や生活史、形態の機能を、その動物をとりまく物理的・社会的環境に対する適応進化の産物としてとらえる「行動生態学」の視点で研究しています。魚類など水生動物を主な研究対象として、配偶システムや性淘汰、認知能、寄生などをテーマに研究を進めています。野外観察や水槽飼育実験など伝統的な行動学の研究手法に加え、分子遺伝解析や組織・生理学的手法も駆使して、動物行動の「なぜ?」に迫っていきます。

① ヨウジウオ科魚類の配偶システム進化と性淘汰

ヨウジウオ科魚類には一夫一妻、一妻多夫、乱婚など様々な配偶システムがみられ、また性役割が逆転し、雌に性的形質が発達する種が存在するため、配偶システム進化と性淘汰研究のモデル生物として注目されています。配偶システムの地理的種内変異とその要因、配偶システムの多様化と系統的制約、一夫一妻種におけるペアボンド維持の至近的機構などを研究しています。

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ヨウジウオ科魚類

② 魚類の認知能とその進化生態学的意味

近年の研究で、従来考えられていたよりも魚類が高い認知能を持つことが明らかになってきました。個体識別能や鏡像自己認知、推移的推論など魚によっては非常に高度な認知能を持つようです。何が個々の種の認知特性を決めているのでしょうか、また、その認知能の高さは彼らの生存や繁殖にどう役立っているのでしょうか?メダカの連合学習能やヨシノボリの個体識別能に焦点を当てた研究を行っています。

魚類認知能

魚類認知能

③ 寄生という生き方、寄生が織りなす生物多様性

魚の餌となるコオロギやカマキリを溺死させることで、河川と森林の生態系を繋いでいるハリガネムシの例のように、生態系を駆動する構成要素としての寄生生物の重要性が近年注目されています。宿主の習性を利用し、ときに宿主の行動を操作する寄生生物の巧みな生存戦略はどのように進化してきたのでしょうか?私の研究室では、魚類絶対寄生性等脚類ウオノエの初期生活史戦略について、また、ベラ科魚類におけるクリーニング共生(ほかの魚の体表の寄生虫を食べて栄養を得るクリーナーと寄生虫除去による利益を得るクライアントの共生関係)の起源について研究しています。

寄生

寄生

2)環境DNA・メタバーコーディング手法を用いた生物間相互作用の研究

水や土壌などの環境試料や動物の糞から回収したDNAを解析することで、その環境にどのような生物が生息しているのか、その動物が何を食べているのか知ることができます。私の研究室では、環境DNA分析やメタバーコーディング解析を用いて、従来の調査方法では調べることが難しかった生き物同士の繋がりを研究しています。

① 十和田湖産ヒメマスの増養殖における環境DNAを活用した資源管理法の開発

カルデラ湖である十和田湖にはもともと魚が生息していませんでしたが、およそ100年前にヒメマスが導入され、増養殖が始まりました。湖内には他にも数種の魚類が人為放流されており、比較的単純で閉鎖的な独特の生態系をなしています。ヒメマスの資源量はこれまで大変動を繰り返してきましたが、何がその要因なのでしょうか?環境DNA分析によって、湖内のすべての魚類のバイオマスを推定し、その変動パターンからヒメマス資源量に影響する種間相互作用(捕食、被食、資源競争など)を検出することで、ヒメマスの資源量予測や資源管理を可能にしたいと考えています。

② 魚食性鳥類の混合コロニーにおける多種共存機構

青森県内に魚食性鳥類であるカワウとウミウ、アオサギの3種が、同じ時期に同じ場所で営巣している混合コロニーがあります。同じ資源を利用する種間なので競争的排除が働きそうですが、3種は仲良く(?)共存しています。競争を緩和するどのようなメカニズムが働いているのでしょうか?回収した糞のメタバーコーディング解析を行い、3種の鳥類の食性を比較することで共存機構を明らかにしたいと考えています。

eDNA

eDNA

2024年10月18日 更新
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