教員紹介
分子生命科学科 生命科学コース
高田 晃 准教授
TAKADA Noboru
専門分野:
天然物化学
- キーワード:
- 天然物化学
- 植物ホルモン
- 環境調和型農薬
- ケミカルコミュニケーション
研究内容
植物はその体内に様々な有機化合物を保有しており、その中には植物の成長調節や我々の健康維持に役立つ機能性有機化合物が数多くあります。私の研究室では新しい機能性化合物を見出し、その機能性を調べる研究を行っています。また、それら機能性化合物を土台とした新しい薬剤の開発にも挑戦しています。
1)植物の成長調節剤の開発
発芽したダイコンの茎葉部は冬を越えるまでロゼット型と呼ばれる茎が短い形態をとりますが、春になると急激に茎が伸長する(抽だい)とともに花を咲かせます。このロゼット型の維持がダイコンの品質や生産に大変重要です。
植物ホルモンの1種であるジャスモン酸メチルは抽だい阻害作用があることが知られていますが、副作用が強く、農薬として使えません。そこで私の研究室では、この物質の化学構造を一部改変することで、副作用を抑えつつ抽だい阻害作用を示す成長調節剤の開発を進めています。
2)高血圧、記憶改善薬の開発
高血圧症は様々な病気の発症リスクを高めるため、先進国を中心に問題となっています。アンジオテンシン変換酵素(ACE)は血圧上昇に関与する重要な因子の1つで、この阻害剤は高血圧症治療薬になります。さらに近年、脳内ACEが記憶保持に関与するとの報告も増えつつあります。
ニコチアナミン(NA)は植物が普遍的に保有する化合物で、ACE阻害作用があることが知られていました。私はNAを土台として高血圧症、認知症の治療薬が開発できるのではないかと考えました。私の研究室ではNAを多く含む野菜を特定するとともにNAに記憶改善効果があることを見出しました。また、NAがACEのどこに作用するのかドッキング・シミュレーション・プログラムを使って予測しました。さらにNAの化学構造を一部改変することで、新しい高血圧症、認知症の治療薬ができないか研究しています。
3)イモグサレセンチュウ誘引剤の開発
イモグサレセンチュウの感染により、ニンニク生産に大きな被害が生じています。私はこの感染にはニンニク中の何らかの物質がこの線虫を誘引しているのではないかと考えました。この仮説に基づき、ニンニクの成分を調べた結果、メチインに線虫誘因活性があることを見出しました。メチインの化学構造を一部改変することで、新しい線虫誘引剤ができないか研究しています。