教員紹介
分子生命科学科 応用生命コース
殿内 暁夫 教授
TONOUCHI Akio
専門分野:
微生物生態学
- キーワード:
- ゲノム解析
- 分子系統解析
- 微生物分離
- 微生物利用
研究内容
豊富な生態系が維持されている白神山地ですが、その生態系を支える微生物の実態はほとんど知られていません。2011年頃から白神山地に生息する菌類と細菌を対象に、弘前大学農学生命科学部附属白神自然環境センターの白神自然観察園を主たるフィールドとして細菌・菌類の研究を行っています。
これまでに、白神山地から分離した微生物で構築した環境微生物ライブラリー(細菌と真菌を合わせて500株以上)を利用し、細菌に関しては土壌から難培養性のAcidobacteria1種、樹皮からは3種を新規分類群として記載・報告しています。特に、ブナから分離した細菌は難培養性で知られるArmatimonadota門に所属する目レベルで新規な細菌で、新目新科新属新種Capsulimonas corticalisとして報告しました(写真1)。写真からもわかるようにこの細菌は非常に厚い粘液層に包まれていて、中性多糖を多量に生産する興味深い細菌です。この多糖を保湿剤などに利用可能かどうかの研究も行っています。
菌類に関しては担子菌類の分離と系統分類を行っており、これまで知られていなかったキノコや誤分類されていたキノコを発見して学会発表や論文発表をお行っています。2014年にはそれまで食べられるキノコとして人気の高いムキタケが実は2種類のキノコが混同されていた名前であることを明らかにし、それらをムキタケとオソムキタケ(新しい名のキノコ)に分けることを提案しました(写真2の黄色がムキタケで緑色がオソムキタケ)。私達の発表以降に出版されたキノコ写真集の多くはオソムキタケという名称を採用しています。現在も白神山地で新しいキノコを発見し続けており、今後その成果を学会や論文で発表する予定です。なお、白神自然環境研究センターのホームページには白神山地に生息しているキノコのデータベースを置いていますので興味のある方は御覧ください。
その他には白神山地から分離した微生物の利用研究を通じた社会貢献も行っています。その成果としては白神山地から分離した酵母Saccharomyces cerevisiaeを「弘前大学白神酵母」として商標登録(登録第5739997号)し、地元企業のリンゴ酢・シードル・清酒・ワイン・アップルブランデーの製造に利用されてます(写真3)。