教員紹介

国際園芸農学科 園芸農学コース

登島 早紀 助教

TOSHIMA Saki

専門分野:
果樹園芸学

  • キーワード:
  • 果樹育種
  • 機能性成分
  • 果実品質
  • 環境適応性
  • 高温ストレス耐性

研究内容

1.キイチゴ野生種を利用したラズベリー育種

ラズベリーやブラックベリーなどのキイチゴは生食だけでなくジャムなどの加工食品としても利用価値が高い小果樹で,近年ではラズベリー果実中のフラボノイド等による高い抗酸化活性が示され,スーパーフードとして世界で注目されています。一方,日本に出回っているラズベリーのうち99%が輸入されており,過去20年間で輸入量も増加しています。しかしながら日本でのラズベリー栽培は冷涼地のみの栽培に限られており,栽培されているラズベリーは欧米から持ち込まれた品種ばかりで,収量性も乏しいです。そこで本研究室では日本在来野生種キイチゴを利用したラズベリー育種を行っています。

キイチゴ野生種ナワシロイチゴの育種素材としての多様性評価

日本には40種以上の野生種が自生しているとされており,その中でもナワシロイチゴ(写真1)は朝鮮半島から中国,東南アジアに自生しており,日本では北海道から沖縄まで広く分布している種です。この環境適応性の高い種ナワシロイチゴですが,これまで種内における多様性評価は行われいませんでした。本研究室では日本全国からナワシロイチゴを採取し,遺伝的解析を行うことで種内の多様性を評価しています。今後ナワシロイチゴの日本への伝播経路や分布拡大について明らかにし,さらにこれらの研究から環境適応性獲得のメカニズムや関連遺伝子の解明に繋がると考えています。

写真1:ナワシロイチゴ

写真1:ナワシロイチゴ

キイチゴ野生種ナワシロイチゴとラズベリーの種間雑種の作出

本研究室では日本ラズベリーの作出を目指し,赤ラズベリーおよび黒ラズベリーとナワシロイチゴとの種間雑種系統を育成しています。赤ラズベリー‘Indian Summer’とナワシロイチゴの種間雑種は暖地環境下において旺盛な成長で二季なり性を示し,従来品種と比較し果実中のカロテノイド含量が高いことを示しています(写真2)。また,高い抗酸化活性を持つ黒ラズベリーとナワシロイチゴとの種間雑種とその複二倍体(2n=4x=28)も旺盛な成長を示し,複二倍体は二倍体と比較し花が大きく正常な果実を着果確認しています(写真3)。現在は東北地方に自生するナワシロイチゴや他のキイチゴ野生種との種間雑種の作出を行い,東北地方に適したラズベリー育種を行っています。

写真2:赤ラズベリーとナワシロイチゴの種間雑種

写真2:赤ラズベリーとナワシロイチゴの種間雑種

写真3:黒ラズベリーとナワシロイチゴの種間雑種(4倍体)

写真3:黒ラズベリーとナワシロイチゴの種間雑種(4倍体)

2.リンゴにおける温暖化に向けた高温ストレス耐性に関する研究

世界規模で温暖化が進行する中,野菜や果物など非生物的ストレス耐性育種への注目が集まっています。リンゴは世界で3番目に多く消費されている果物で,日本のリンゴ生産量では青森県が全国の生産量の約6割を占めています。近年では高温により果皮着色不良や日焼け,果実の軟化などリンゴ果実品質への影響が問題となっています。本研究室では温暖化による課題解決に向け,高温ストレス耐性を有する品種の選抜や高温下における高品質リンゴの作出を行っています。また,近年の健康志向の高まりから,アントシアニン等の機能性成分が豊富に含まれている赤色果肉リンゴが世界で注目されており,本研究室でも高温ストレスに強い赤色果肉リンゴの作出を行っています(写真4)。

写真4:赤果肉リンゴ実生圃場(冬)

写真4:赤果肉リンゴ実生圃場(冬)

2024年8月26日 更新
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