教員紹介

分子生命科学科 生命科学コース

牛田 千里 教授

USHIDA Chisato

専門分野:
分子生物学

  • キーワード:
  • ncRNA
  • ncRNP
  • RNomics
  • stress response
  • C. elegans

研究内容

ゲノムプロジェクトの進展とともにncRNAの種類も増加の一途をたどり、今や生物種によってはゲノムにコードされているncRNA遺伝子の数がタンパク質遺伝子の数を上回るほどです。それらの中で機能が明らかとなっているncRNAはごく一部であり、大多数はその機能も、関与する生命現象も不明です。一方で、機能が明らかになっているncRNA(機能性ncRNA)に目を向けると、それらは実に多様な役割をもって、細胞や個体が織りなす生命活動のあらゆる局面で活躍していることがわかります。例えば、tRNAやrRNAは古くからよく研究されているncRNAの代表であり、タンパク質遺伝子の発現に必須です。興味深いことに、最近、これらに由来するRNA断片(tRF, rRF)が単なるtRNAやrRNAの分解産物ではなく、新規の機能性RNAとして細胞に存在することが示されています。miRNAやバクテリアsRNAの多くは遺伝子発現の制御に働きます。ある種のsiRNAやlncRNAはクロマチンのダイナミックな構造変化に貢献します。snoRNAの多くはrRNAのメチル化やシュードウリジル化といった化学修飾をガイドしたり、rRNA前駆体のプロセッシングにシャペロンとして働いたりします。CRISPR-Cas9システムに働くgRNAも忘れてはなりません。この他、生体の化学反応の触媒として働くもの(リボザイム)、スキャフォールドやデコイとして働くもの、細胞内構造体の構築に寄与するもの等々、実にncRNAは多彩かつ多才です。機能がわかっているごく一部のncRNAでもこれだけの多様性を示すのですから、機能未知のままに残されている他のncRNAの機能分子としてのポテンシャルは計り知れません。

細胞や個体、そして生命のしくみを理解するためには、複雑な遺伝子ネットワークのもとに構築された生体システムを明らかにすることが必要です。そのためにはタンパク質だけでなく、ncRNAについても、それらが関与する生命現象を見出し、その生理機能と分子機能、作用機序を明らかにし、既存の遺伝子ネットワークや生体システムとどのように関係するか知る必要があります。そこで、私たちの研究室では線虫(Caenorhabditis elegans)をモデルに、新たな生体内ncRNA/ncRNPシステムの発見を目指した研究を行っています。

2023年2月21日 更新
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