教員紹介
生物学科 基礎生物学コース
吉田 渉 助教
YOSHIDA Wataru
専門分野:
分子発生学
- キーワード:
- ナマコ
- 原虫
- 寄生虫
- 扁形動物
研究内容
ナマコ(海鼠)は地域の貴重な水産資源の一つです。研究室ではナマコの一種、マナマコの人工種苗生産技術開発に取り組んできました。ナマコの種苗生産は、産卵期の親ナマコの捕獲から始まり, 採卵,人工受精, 幼生飼育過程を経て, 稚ナマコにまで成長させます。近年では中国市場でのナマコ需要の増大による乱獲により、南方系ナマコの資源量の激減が報告されています。国際保護連合(ICUN)はマナマコを絶滅危惧種に指定しました(2013年)。絶滅が危ぶまれる動植物の保護においては、国際的な取引を規制することで締結国に対して強い強制力をもつためワシントン条約の附属書に掲載されることは大きな意味を持ちます。西南諸島から沖縄県に分布するイシナマコ(black teat, white teat)は2020年、バイカナマコ属2種は2023年にワシントン条約の附属書Ⅱへの掲載が決定しました。これら南洋ナマコはペントスとして海洋生態系の底生生物群集の一部を担っています。大型ナマコ類の消失は今後、底生生物群集構造を大きき変え、生物多様性を失う原動力になりかねません。南洋ナマコの漁獲調整による資源保護だけではなく、人為的な資源添加(種苗放流)が必要な時期にきていると考えています。現在、利用頻度の低いニセクロナマコ、トラフナマコなどで種苗生産に必要な基礎研究を行っています。今後は絶滅が危惧されているイシナマコの種苗生産を目指し、産卵時期の特定や新規ペプチドホルモンによる産卵誘発機構、幼生飼育を研究していきます。
またナマコの卵巣に寄生する原虫、アメフラシの鰓やウミウシに寄生する扁形動物、洞窟や高山に生息するプラナリアの分類学的研究も行っています。研究対象(原虫、扁形動物、棘皮動物)の分布域調査(国内外)、対象種の発生・形態及び分子生物学的研究から系統類縁関係を明らかにしていきます。