センターの専任教員(相馬助教)が世界自然遺産の小笠原諸島に固有の昆虫に関する論文を出版しました!
書誌情報と解説を以下に示しました!
オープンアクセスなので、リンク先から誰でも閲覧できます!
Souma, J. (2025) An illustrated key to the lace bugs (Hemiptera, Heteroptera, Tingidae) from “Oriental Galapagos” (the Ogasawara Islands, Japan), with descriptions of three new species of the endemic genus Omoplax Horváth, 1912. Zookeys, 1250, 243–284. https://doi.org/10.3897/zookeys.1250.160064
小笠原諸島のグンバイムシ科(カメムシ目)には、2固有属(ムニングンバイ属Acanthomoplax Souma & Kamitani, 2021とオガサワラグンバイ属Omoplax Horváth, 1912)に含まれる5種(ムニングンバイA. tomokunii Souma & Kamitani, 2021、オガサワラグンバイO. desecta (Horváth, 1912)、カルベグンバイO. karubei Souma, 2022、チチジマグンバイO. majorcarinae Guilbert, 2001、ムコジマグンバイO. mukojimensis Souma, 2022)が知られていました。本研究では、同諸島での徹底的なフィールドワークで発見された3新種(ハハジマグンバイO. hisasuei Souma, 2025、イヌグスグンバイO. inugusu Souma, 2025、コブガシグンバイO. kobugashi Souma, 2025)を記載しました。結果として、同諸島から8固有種の本科が確認されました。さらに、ムコジマグンバイをのぞく7種で寄主植物を特定しました。形態的特徴が近似する複数種では、寄主植物が同種または近縁種の樹木で、異所的分布が判明しました。シマシャリンバイに寄生する2種では分布域が植物の空間的遺伝構造と一致しました。キンショクダモを寄主植物とする2種でも同様の状況でした。同諸島の本科は海洋島の固有昆虫を材料とした種分化研究に格好の材料と考えられます。他方で、多くの外来生物が同諸島の固有生物の脅威となっています。今後の保全研究に資するため、本科への影響が懸念される外来生物と各種の生息状況について議論しました。同諸島に分布する本科は有人島で採集が困難または不可能な種が存在します。避けて通れなかった無人島でのフィールドワークは貴重な経験となりました。実質的な崖登りに耐え抜いて同諸島の最稀種であるムニングンバイに巡り会えた際の興奮は記憶に刻まれています。傭船で波に揺られて外洋を渡ったのもスリリングな思い出です。まだ見ぬ無人島を目指しつつ、新知見を狙う研究ライフを継続する所存です。いつか驚くべきカメムシに出会えると信じて…。
ハハジマグンバイOmoplax hisasuei Souma, 2025
イヌグスグンバイOmoplax inugusu Souma, 2025
コブガシグンバイOmoplax kobugashi Souma, 2025
本論文については弘前大学HPにプレスリリースが掲載されています。
PDF形式はこちらになります。
日本昆虫学会でのシンポジウムと小集会を2週間後に控えた最高のタイミングで論文が公表されました!
青森在住を活かしたあのカメムシの原稿が受理されたので、近いうちに研究成果を再びお知らせします!