半年ほどブログの更新が滞っていました。
雪解けの時期なので、冬眠から覚めて更新を再開していきます。
今回はセンターの専任教員(相馬助教)が直近の数ヶ月で公表した論文の紹介です!
書誌情報と解説を以下に示しました!
三編ともオープンアクセスなので、リンク先から誰でも閲覧できます!
Souma, J., Le, C.V.C. & Pham, T.-H. (2024) First formal record of the feeding habits of Saileriolidae (Hemiptera, Heteroptera, Pentatomomorpha, Pentatomoidea), with redescription of Bannacoris hyalinus (Schaefer & Ashlock, 1970), comb. nov. endemic to Vietnam. Zookeys, 1221, 363–375. https://doi.org/10.3897/zookeys.1221.135026
Saileriolidae(カメムシ目)は東南アジアに3属4種のみが知られますが、科レベルで生態的知見が不足し3種で原記載以降の記録がありません。本研究では、64年前にベトナムで得られた1標本のみが知られる稀種Saileriola hyalina Schaefer & Ashlock, 1970を再記載し、その所属を形態的特徴からBannacoris Hsiao, 1964に移動させ新結合Bannacoris hyalinus (Schaefer & Ashlock, 1970)を提唱しました。さらに、本種がハマビワ属の一種(クスノキ科)に寄生し、成虫と幼虫が葉裏から吸汁することを確認しました。先行研究の知見と合わせて本科の生態的特性を考察し、葉食性カメムシのグンバイムシ科との類似性や姉妹群のクヌギカメムシ科との差異に言及しました。葉食性カメムシは研究材料として興味深いですが、普通種でも生活史が十分に記載されていない分類群が多数派です。今回の発見を皮切りに知名度が低い科でも基礎生態の解明が進むことを期待しています。Saileriolidaeには和名がありませんが、外部形態と生活史からグンバイカメムシ科と個人的に呼んでいます。この論文で再記載したB. hyalinusに和名を提案するならスカシグンバイカメムシが丁度良さそうです。
Bannacoris hyalinus (Schaefer & Ashlock, 1970)
Souma, J. (2025) A new species and two new records of the moss-feeding lace bug genus Acalypta (Hemiptera, Heteroptera, Tingidae) from Hokkaido, northern Japan, with an illustrated key to the Japanese species of the genus. Zookeys, 1229, 107–132. https://doi.org/10.3897/zookeys.1229.142344
日本産マルグンバイ属Acalypta Westwood, 1840(カメムシ目:グンバイムシ科)には本土四島と周辺島嶼からマエハラマルグンバイA. cooleyi Drake, 1917、ムロマルグンバイA. gracilis (Fieber, 1844)、ヒラシママルグンバイA. hirashimai Takeya, 1962、ユキグニマルグンバイA. marginata (Wolff, 1804)、ミヤモトマルグンバイA. miyamotoi Takeya, 1962、ナガサキマルグンバイA. pallidicoronata Souma, 2019、マルグンバイA. sauteri Drake, 1942、ツルギマルグンバイA. tsurugisana Tomokuni, 1972の8種が知られていました。本研究では、調査が不足していた北日本に分布する種を再検討しました。北海道で過去に未同定種として記録された種は本属の既知種と形態的に異なったので、新種クシロマルグンバイA. alutacea Souma, 2025として記載されました。さらに、北海道と利尻島で発見された未同定種は旧北区の広域に分布する日本新記録種ヤチマルグンバイA. carinata (Panzer, 1806)として報告されました。既知種のマルグンバイも北海道と粟島から初めて記録されました。本研究により、日本産本属は10種となり、北海道に6種が分布することが明らかとなりました。本属の一部は他の昆虫が得られないような環境に自生する蘚類に低密度で生息しています。なので、野外調査は困難を極めました。一日かけても何一つ成果がない日ばかりでしたし、運良く当たりを引いても数個体が限度でした。怒りの力で外に出るモチベーションを落とすことを防ぎ、どうにか研究を完遂することができました。生きたクシロマルグンバイを野外で初めて目にした時の感動は今でも忘れられません。フィールドワークの辛さも忘れられませんが…。
クシロマルグンバイAcalypta alutacea Souma, 2025
Aiba, H., Souma, J. & Inose, H. (2025) A new genus and species of Microphysidae (Hemiptera: Heteroptera) with long labium in Late Cretaceous Iwaki amber from Futaba Group of Iwaki City, Fukushima Prefecture, Japan. Paleontological Research, 29, 44–53. https://doi.org/10.2517/prpsj.240017
白亜紀の地層から発見される琥珀は昆虫の進化史を議論するために重要な分類群が含まれています。しかし、東アジアでは琥珀に含まれる化石昆虫がミャンマー琥珀をのぞき十分に研究されていません。いわき琥珀は福島県いわき市に位置する白亜紀後期の地層から産出されますが、化石昆虫の先行研究は1例のみでした。本研究では、この琥珀から既知の分類群と外観が顕著に異なるカメムシ目の化石を発見し、新属新種クチナガフタガタカメムシIwakia longilabiata Aiba, Souma & Inose, 2025として記載しました。本種は体長を超える長さの口吻をもつトコジラミ下目としては特異な化石分類群ですが、科の定義への一致から暫定的にフタガタカメムシ科に含められました。日本のカメムシ化石ではムカシアシアカカメムシの発見にも驚きましたが、今回の発見は間違いなく最大の衝撃でした。いつか国内産の琥珀でグンバイムシ科の研究ができることを夢見ています。
今年度も昨年度に引き続き研究成果を積極的に論文として公表していく所存です!
そろそろ青森在住を活かしたあのカメムシの原稿が受理されると嬉しいのですが…。